隠蔽配管とは?メリット・デメリット7選
冷媒配管やドレンホースなどの配管類は、エアコンに必須のパーツですが、設置工事のやり方を大きく左右する要素ともなります。その工事法の1つが「隠蔽配管」と呼ばれるもので、住宅環境などの要因からこちらを採用するケースも多くなっています。ただ、具体的なやり方や長所・短所については、あまり詳しくないという方も多いでしょう。
本記事では、エアコンの隠蔽配管の仕組みや、採用に伴うメリットとデメリットについて解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
隠蔽配管とは
エアコン設置に伴う「隠蔽配管」とは、一言で言えば、「配管を外から見えなくする処置」のことです。この反対にあたるのは「露出配管」と呼ばれる方式で、こちらの場合配管は、外部に露出させる形で取り付けられます。一般的には露出配管が多く採用されますが、さまざまな理由から隠蔽配管を選ぶケースも少なくありません。
隠蔽配管には、主に2つのタイプがあります。
1つは「埋設配管」で、こちらは建物の壁の内部や天井裏などに、建築時から配管を埋め込んでおく方式です。もう1つは「さや管方式」と呼ばれるもので、こちらは建物を建てる際、壁の内部などに配管用のスペースを確保しておき、実際にエアコン設置する段階になって、点検口などを利用して配管を通すというやり方になります。
メリット・デメリット
エアコン取り付け工事における隠蔽配管は、前述のように配管が外部に露出しないという特徴を持ちます。では、そのことによってどういった利点や難点が生まれるのでしょうか。以下の項目では、隠蔽配管を採用するメリットとデメリットについて解説します。
メリット
見た目をすっきりさせられる
エアコン取り付けに伴う隠蔽配管の第一のメリットが、「見た目の良さ」です。
露出配管の場合、上記のように、配管が外部にむき出しになる形で設置されます。この時配管類には白いテープが巻きつけられ、一応見た目にも配慮がなされますが、全体としてごちゃごちゃした印象になるのは避けられません。プラスチックのカバーをかぶせるやり方もあるものの、見た目に目立つという根本的な問題は残されます。
これに対し隠蔽配管の場合は、配管自体が外部の目から隠されているため、外観が劇的にすっきりします。デザイナーズハウスなど外観を重視する住宅の場合、特にメリットがあると言えます。
どの位置にでもエアコンを設置できる
隠蔽配管のメリットとしては、「位置にとらわれずエアコンを設置できる」という点も大きくなっています。
露出配管を採用する場合、配管穴の位置は、部屋の内側と外側で同一となります。室外機が置ける壁面はベランダ側などに限られるので、配管穴もその壁に設けられることになり、そうなると室内機の取り付け位置も、大抵の場合制限されてしまいます。
一方隠蔽配管の場合は、構造上、配管穴の位置が部屋の内外で異なります。そのため、室外機の位置に関係なく、室内機の取り付け位置を自由に選べるという利点が得られます。
配管の劣化を防げる
エアコンの隠蔽配管は、配管の劣化防止の上でも大きな効果を発揮します。
露出配管の場合、配管が外部にむき出しになっている特性上、紫外線や風雨の影響を受けやすいというデメリットがあります。テープによる一応の保護はありますが、テープ自体の耐久性が5年から7年ほどしかなく、定期的に巻き直さなくてはなりません。放っておくと、配管の劣化を早める可能性があります。
これに対し隠蔽配管は、配管が壁の内部や天井裏を通っているため、日光や風雨の影響を心配せずにすみます。隠蔽配管における配管の耐用年数は、30年ほどとされています。
デメリット
設置にかかる時間と費用の大きさ
エアコンの隠蔽配管のデメリットとしては、まず「設置のために時間や費用がかかりやすい」という点が挙げられます。
メリットの項目で、隠蔽配管は配管穴の位置が部屋の内外で異なると述べましたが、これは配管の長さが通常より長いことを意味します。そうした長い配管を、建築時またはエアコン設置時に通す必要があるため、工事には比較的多くの時間を要します。
また、工事時間が長くなるぶん、費用も高額につきやすい傾向があります。また2階から1階への配管など、配管の距離が延びるほど費用は高くなるので、具体的な額は必ず見積りでチェックしておきましょう。
トラブル原因の特定が難しく、修理費が高め
エアコンの設置工事では、配管がらみのトラブルが起きる確率が少なくありません。その場合、配管が外部に出ている露出配管であれば、原因の特定も比較的しやすい状況にあります。
しかし、配管が壁の内側などを通る隠蔽配管の場合、配管を調べること自体が困難なため、原因の特定に手間取るケースが多くなっています。さらに原因を特定できても、直すのは容易ではありません。外壁を削ったり穴を開けるなどの作業を伴うことがあり、そのせいで修理完了まで、多くの時間や費用を費やすことになりがちです。
工事に対応できる業者が限られる
エアコンの隠蔽配管工事は、どの業者でも対応できるわけではありません。実際に、家電量販店では工事を受け付けていないところが多く、この点は大きなデメリットとなります。
家電量販店が隠蔽配管工事を敬遠しがちな理由は、いくつかあります。1つは下見が必須となることで、量販店の多くは、下見の上で取り付けというサービスを行っていません。もう1つの理由は、工事の難度が高いことです。担当者に高度な技術が求められることから、依頼を断る量販店が多くなっています。また、そもそも設置工事に必要な資格等を持たない可能性も考えられます。
「見積りの後案内」とする店舗もありますが、見積った後で工事不可と判断されるケースもあるので、その点は踏まえておきましょう。
冷暖房の効きが悪いことも
エアコン取り付けの際隠蔽配管を採用すると、冷暖房の効率が低下することもあり得ます。
先に述べた通り、隠蔽配管は配管穴の位置が部屋の内外で異なり、そのせいで配管が長くなりやすいという特徴があります。このように配管の距離が延びることは、その内部を空気(冷媒)が通る時間も、通常より長くなることを意味します。冷媒が運ぶ熱は、配管内を移動するうちに少しずつ失われていくので、理屈の上では配管が延びるほどエアコンの運転効率も下がることになります。
多くの場合そこまではっきりした影響はありませんが、あまりに配管距離が長い場合は、上記のデメリットも懸念されます。