遺品整理のトラブルと対策
近年は少子化などの社会的背景もあり、遺品整理サービスを手がける業者が急増しています。こうした業者の利用は、遺族にとっては便利ではありますが、必ずしも良いことばかりではありません。市場の拡大に伴い悪質な業者の数も増加しており、それによってさまざまな被害を受けるケースが多発しています。では、具体的にどのような種類のトラブルが、遺品整理サービスではよく起こっているのでしょうか。
本記事では、現在遺品整理の依頼先を探している方や、遺品整理を考えているという方のために、悪質な業者が起こしがちなトラブルの例と、その対策法について解説していきたいと思います。
業者による強引な営業
遺品整理にまつわるトラブルで、最近増えているのが、「業者による強引な営業」という問題です。遺品整理業者の訪問営業では、かなり強引な手口で契約を迫ってくるケースも少なくありません。
たとえば、何度もしつこく電話してきたり、ずっと居座って帰らないといった具合です。また、有無を言わせぬ口調で圧迫したり、理不尽な難癖をつけて契約を迫るケースや、ひどい場合は恫喝めいた態度で恐怖感を覚えさせ、断れない状況に追い込むといったケースもあるそうです。このほか、「今すぐに決めれば安くなる」などと急かす手口なども挙げられます。
こうした目に遭うと、「契約した方が楽かな」とつい弱気になってしまいがちですが、このような手法による営業は、明らかな違法行為にあたります。ですから、迷惑や恐怖を感じるような営業を受けた場合は、訪問員の所属する事業所や消費生活センター、あるいは警察に電話しましょう。また、訪問見積りにあたっては、家族や友人などに立ち会ってもらうのも、対策として有効です。
遺品の盗難
遺品整理に関するトラブル、2例目は、「遺品の盗難」です。
非常に稀ではありますが、事前に回収や処分をしないよう伝えておいた大事な品物でも、作業員が誤って回収してしまうことはあります。ただ、万一こうした事故が起こった場合でも、良識ある一般的な業者なら、通常は補償などの対応をしっかり行ってもらえます。
一方、こうしたケースとはまったく異なり、依頼者の目の届かないところで遺品を盗む悪質な業者も存在します。標的となるものは、現金やブランド物の時計、指輪などの宝飾品や貴金属、骨董品などといったものから、コレクターの間で高値で取引されるような珍しい品、果ては家電品やスマホ、カード類、商品券に至るまで、さまざまです。中でも狙われやすいのが「へそくり」で、依頼者も存在を知らないため、盗まれても気付きにくいという難点があります。
こうした問題の対策としては、盗まれる心配のあるような高価な品物や貴重品、また、無くなると困る重要書類や思い出の品などは、作業前に別の場所へ移して保管しておくことがおすすめです。いくら優良な業者であっても、不測の事態は起こり得ますから、きちんと自衛手段を講じておいた方が良いでしょう。
作業が雑
続いての遺品整理でよくあるトラブルは、「遺品を雑に扱う」ということです。
そもそも遺品整理とは、故人の冥福を祈るため、生前使っていたものをいたわりつつ丁寧に片づけていく作業です。このことは、作業を行うのが誰であれ変わりません。たとえ仕事として行っている業者でも、根本には故人や遺族に対する敬意があるべきですし、通常の業者なら、その点には十分な配慮があります。
しかし、中にはそうした配慮を怠り、遺品を平気でぞんざいに扱う業者も存在します。故人が大切に使っていた品物でも、ぶつけたりして傷をつけたり、壊してしまうという業者です。また、場合によっては勝手に不用品として処分に出したり、土地の権利書を捨ててしまうなどといったケースもあります。それだけでなく、部屋に傷を付ける、備品を壊すといった例も見られます。
こうしたトラブルへの対策としては、事前に業者のチェックをしっかり行うよりほかにありません。遺品整理を専門に行っている業者か、企業理念はどんなものか、また、見積に来たスタッフの言葉遣いやマナーはどんなものかなど、さまざまな点を良くチェックしてから判断するようにしましょう。
いきなり高額なキャンセル料を請求される
遺品整理でありがちなトラブル、4つ目は、「高額なキャンセル料の請求」です。
さまざまな事情から、遺品整理の依頼をキャンセルするケースはよくあります。一般的な業者であれば、こうした場合でも透明な対応を心掛けるのが当然ですが、やはり中には悪質な対応をする業者も存在します。契約取り消しに伴う高額なキャンセル料や違約金を請求するといった業者ですが、これについては、事前に何の説明もないのが通常です。場合によっては、解約条件が書かれた契約書自体が存在しないこともありますし、さらに契約時に支払った前払い分を返還しないという、悪質なケースも見られます。
こうしたやり方は、遺品整理サービスの解約に関する規制やルールなどがないことを悪用した、典型的な悪徳業者の手口になります。
この対策としては、契約前に解約時の条件等についてしっかり確認しておくのが大事ですが、万一上記のような問題が発生した場合でも、業者の訪問時に交わした契約については、クーリングオフ制度を利用することで無効にすることもできます。
追加料金を請求される
「不当に追加料金を請求される」というトラブルも、遺品整理業界では頻発しています。
上記のキャンセル料の件もそうですが、遺品整理サービス関連のトラブルの中では、お金にまつわるものの発生頻度が最も高くなっています。その中で、事前の説明にないオプション料金などを追加料金として請求されたというケースは、全国の消費生活センター等に月300件以上寄せられるほど多発しています。こうしたケースでは、見積の段階では安く見せかけ、契約後にさまざまな理由を付けて、見積の何倍にもなる高額な費用を請求するといったパターンが一般的です。
具体的な口実としては、「物量が予想以上だった」「作業時間がオーバーした」などが典型的ですが、ほかにも作業員の人数を勝手に変更するなどの手段を用いる場合もあります。
こうした請求に関するトラブルの対策としては、見積段階で具体的な作業の中身や料金の詳細について、きちんと確認しておくことが大事です。その際に、追加オプションの有無やその内容・金額についても明らかにしておきましょう。仮にそうした点の説明を渋るような業者であれば、依頼しない方が賢明です。
不法投棄
遺品整理で気を付けたいトラブル、最後は「不法投棄」の問題です。
遺品整理では、大量の不用品が発生することが多くなっています。そうした不用品は、遺族の要望や法に準じて適正に処分することが求められますが、一般的な業者であれば、この点についてきちんとクリアしているのが通常です。しかし、悪質な業者に依頼した場合、回収した不用品を不法に山奥に捨てたり、川底に沈めるといったケースが少なくありません。
こうした投棄は大抵の場合、本来供養のお焚き上げや処分・リサイクルなどにかけるべき費用を浮かして、少しでも利幅を増やそうという狙いから行われるようになっています。この場合厄介なのが、不法投棄を行ったのが業者であっても、持ち主の遺族が責任を問われるおそれがあるということです。ですから、不法投棄を行うような業者には絶対に依頼しないことが必要となります。
その対策としては、「極端に安い料金を謳う業者は疑う」という意識を徹底することが挙げられます。こうした業者は、不当に処分費用を安く抑えている可能性があるためです。また、「一般廃棄物収集運搬業許可」などの資格を持っているかどうかも、事前にしっかり確かめておきましょう。